技術コラム
ホットランナーとは?ゲート形式や使用するメリットまで詳しく解説!
ホットランナーとは
ホットランナーは、プラスチック射出成形において、樹脂を溶融した状態で移動させ、樹脂流路のランナーやスプルーを固化せずに成形品のみ取り出す技術を指します。また、ホットランナーはノズル、マニホールド、ヒーター、そしてセンサーなどの電子部品によって構成されるアセンブリです。
マニホールドはランナー分岐のための樹脂流路となる部分です。成形する過程において、マニホールド内のスプルーとランナーは、ヒーターの熱により固化せず常に溶融した状態を保つことができます。
その他、様々な電子部品が組み合わさることで、樹脂温度や流速、圧力を制御することができるため、安定した生産を行うことができます。
また、ホットランナーは成形時にランナーやスプルー・ゲートなどの廃棄物を出さないことから、「ランナーレス成形」とも呼ばれ、材料コストの削減にも効果があります。
ホットランナーとコールドランナー
ホットランナーと対極にあたるのが、コールドランナーです。コールドランナーでは、成形品へ樹脂を流すためのスプルー・ランナーも金型内で冷却され、成形品にスプルー・ランナーがくっついた状態で取り出されます。
ホットランナーのようなユニットや設備が不要なため初期費用は安価ですが、スプルー・ランナーの処理といった後工程の作業が必要になります。
ホットランナーは、コールドランナーと比較しても、射出口周辺の加熱により樹脂の流れがより均等になるため、品質の向上が期待できます。
ホットランナーの構造
ホットランナーの構造は下記の通りです。
※バルブゲートの場合
①:ホットランナー(ノズル) ②シリンダー ③バルブゲート ④成形品
ホットランナーのゲート形式
ホットランナーのゲートとは、金型内の溶融プラスチックが射出される場所のことで、製品の形成に重要な役割を果たします。そのようなゲートですが、①オープンゲートと②バルブゲートの主に2種類に分かれます。
①オープンゲート
オープンゲートはノズルチップ形状と温度制御によりゲート周辺の樹脂を固化させることでゲート開閉を制御するゲート形式です。具体的には、ゲート周辺の樹脂が保圧と冷却によって固化することで、ゲートを閉じることができ、再度加熱することで、ゲート周辺の樹脂を溶融することでゲートを開くことができます。
直接的に金型表面に接続されるため、プラスチックの射出が容易であり、効率的な成形を可能にする一方で、プラスチック成形品にわずかな残留マークやバリが生じる場合があります。
②バルブゲート
バルブゲートとは、ゲート内に存在するバルブピンを使用し、直接的にゲートの隙間を埋めたり、開けたりすることでゲートの開閉を行う形式をしています。
ホットランナーを使用するメリット
ホットランナーを使用するメリット①:材料コスト削減
ホットランナーを使用すると、射出成形金型で製品を作る際、プラスチック樹脂を成形部分に溶融した状態で移動させ直接注入することができるため、スプルーと呼ばれる材料の流路が不要です。
さらに、冷え固まったランナーや製品部分の入り口であるゲートなども必要ないため、それらの分の材料費を大幅に削減できます。
廃材もほとんど発生しないため、地球環境に配慮した製品作りにも貢献することができます。
ホットランナーを使用するメリット②:成形時間の短縮による生産性向上
ホットランナーは、スプルーやランナー等の冷却が不要なため、この冷却時間を短縮することができます。
また、成形品を取り出す際にスプルーやランナーがないため、型の開閉ストロークも最小限でスムーズに行うことができます。このようなサイクルタイムの短縮は生産性の向上につながります。
このように、ホットランナーはランナーレスで大量生産に向いておりますが、一方で金型構造が複雑になる為、維持メンテナンスに手がかかるというデメリットもございます。
ホットランナーを使用するメリット③:品質の向上
ホットランナーは、樹脂の温度や流し込む速度、圧力などを制御することができるため、製品のバラつきを抑え品質を向上させることができます。
また、製品のひび割れや反り返りといった仕上がりを左右するゲートが不要なことも、品質を向上させる理由の一つとして挙げられます。
ホットランナーを使用するメリット④:CO2排出量の削減
ホットランナーを使用することで、スプルーやランナーといった廃材が出ないため、ホットランナーを使用せずに生産する場合と比較すると、CO2排出量を抑えることができます。ホットランナーを使用することで、環境へ配慮した生産を行うことができます。
ホットランナーのメンテナンスのポイント
ホットランナーは生産性が高く大量生産には向いている一方で、構造が複雑なため、メンテナンスが大変です。特に構造上、人の手ではメンテナンスできない箇所がマニホールドになります。
※マニホールドは成形機ノズルから溶融樹脂をホットランナー部まで分岐する為の過熱ヒーターが入った金属製板
マニホールドは分解して清掃ができない為、洗浄剤等で清掃をしても長期間使用している間炭化異物が生成され、洗っても取り切れずに残留するようになります。そして、この炭化異物は、生産時に剥がれ落ち、製品に付着あるいは、練りこまれてしまいます。
このような炭化異物に対処する必要があります。
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