技術コラム

プラスチック射出成型金型における「アンダーカット」とは?対策方法まで詳しく解説!

2024.01.30

今回は、プラスチック射出成型金型におけるアンダーカットについて解説します。特に、プラスチック金型においてアンダーカットは発生しますので、プラスチック金型を専門に取り扱う当社だからこそお伝えできる、アンダーカットが及ぼす影響やそれにどのようにして対処しているか、実際の経験をもとに解説していきます。

プラスチック射出成型金型におけるアンダーカットとは

プラスチックの成形品を金型から取り出す際、単純に2つに金型を分割して、成形品を取り出すことができない場合があります。

このような状態において、取り出せない形状部分のことをアンダーカットといいます。突起物や製品の横穴などは、アンダーカットの代表例です。

具体的には、下図における円で囲んだ部分がアンダーカットです。

アンダーカットがある製品の離型時の問題点

アンダーカットがある製品は、そのままでは突起物などの引っかかりにより金型の開閉を行うことができません。無理に取り出してしまうと、突起物の破損は免れません。

実際、想定される不具合としては、、製品欠け、変形、白化、スレ、離型不良などが挙げられます。

このような不具合を発生させないためにもアンダーカット対策をして、離型が可能になるような機構を金型設計に織り込む必要があります。

アンダーカットの具体的な対策方法

次に、ご紹介するのはアンダーカットの対策方法です。

アンダーカットを処理するために移動する部分をスライドコアといいます。このスライドコアを型抜き方向とは違う方向に摺動(スライド)させることで、アンダーカットを解消することができます。

具体的に説明すると、下図のようなアンダーカットの場合、アンダーカット部分を矢印の向きに先にスライドさせ取り除くことで、金型の開閉時に発生する干渉を回避することができます。

このような手順で製品を取り出す方法がスライドコア方式です。

また、スライドコアをスライドさせるために使用するピンをアンギュラピンといいます。アンギュラピンは金型の固定側に斜めに配置されているため、金型が開いた際にアンギュラピンに沿って、スライドコアが横や斜めに移動することから、アンダーカットのある製品を金型から取り出すことができます。

また、傾斜スライドを活用することで、アンダーカットの対策を行うことができます。傾斜スライドは、型が開いた際に成形品を押し出しながら(スライドユニットに接続したスライドロッドが成形品を押し出す)、成形品の内側をスライドするため、アンダーカットをはずすことができます。

その他、置き駒(コマ)方式でもアンダーカット対策を行うことができます。置き駒方式は、アンダーカット部分をコア分割し、成形品の突き出しと一緒に分割コア(置き駒)も取り出し、その後、手動で置き駒を外すという方法です。成形のたびに、分割コア(置き駒)を取り出す必要がありますが、他の方法で対処できない複雑な形状や試作などの小ロットの場合に適した方式です。

その他、金型の外側に油圧のシリンダーを使ってスライドコアを開く構造などもあります。

いずれの方式にしても、アンダーカット部の金型を部分的にスライドさせ先に取り外す、あるいは同時に取り外すことで、干渉を防ぐことができます。

その他、アンダーカットの中でも横穴の場合は、スライドコアを使わずに後から機械加工する方法もあります。追加加工とするのか、アンダーカット処理をするかは、生産数量・加工費・金型費等を考慮して決定します。

当社の内側全周(内周)アンダーカット技術について

当社はこのようなアンダーカットを伴う製品のプラスチック金型の製作について、多数実績がございます。その中でも技術的な難易度の高い、全周アンダーカットについても製作実績がございます。

全周アンダーカットの加工の様子について、動画をご用意しておりますので是非こちらも合わせてご覧ください。

全周アンダーカットのなかでも、特に小さい製品における内径の大部分のアンダーカットを処理できる点が当社の特徴です。例えば、下記のサイズの製品の内径全周アンダーカットを行った実績がございます。

このような全周アンダーカットの処理を伴う金型の設計、製作をプラスチック金型修理・メンテナンスナビでは得意としております。他社では断られたような全周アンダーカット製品もまずは、一度当社にご相談ください!

アンダーカットを伴うプラスチック金型の製作事例

自動車向け全周アンダーカット部品

新規の製品メーカー様から自動車部品の金型の設計・製作に関しましてご依頼をいただきました。
ご依頼の製品は、従来の設計では製品の内径にアンダーカットがあるため、成立しない形状となっておりました。
お引合の経緯としましては、以前弊社が他社向けで設計製作を行った内径の全周アンダーカット金型の実績をみたとの事でのご連絡で・・

アンダーカットを伴う金型の製作、修理、メンテナンスは三恵金型工業にお任せ!

当社は、アンダーカットを伴うような複雑な形状の金型についても様々な製作実績がございます。アンダーカットを解消にするには専門的な知識が必要です。

最適な方法で製作することでコスト削減にも貢献いたします。金型全体の設計から、製作、修理、メンテナンスまで一貫して対応を行っております。

また、金型の設計・製作だけでなく修理・メンテナンスにも対応しています。アンダーカットを伴うような金型の修理、メンテナンスまでトータルサポートいたしますので、金型に関するご相談やお困り事がございましたら、お気軽にご連絡ください。

>>修理・メンテナンスメニューはこちら

この記事の執筆者

  • この記事の執筆者
  • 野中啓志(設計課)

    私は兵庫の出身ですが、石川県で新婚生活を始めることになりグループ会社が石川にある、三恵金型工業への就職を決めました。設計に興味はありましたが、未経験。それでも採用し、ゼロから教えてくださった先輩方には感謝しています。設計は実際にやらなければ身につかないので、仕様書に基づく設計は入社直後からやっていました。現在は設計課に籍をおきながら、「多段式射出成形金型」の試作型製作にも関わっています。社運がかかった開発なので、自然と気合が入ります。