用語集

キャビとられ

キャビとられとは、プラスチック射出成形における型開き後、通常はコア側に張り付きエジェクタピンを用いて取り出す成形品が、キャビティ側に張り付いてしまうという成形不良です。

キャビとられが起こると、通常はエジェクタピンで自動的に取り出すことができる成形品を、作業者が手作業で取り出すという手間が生じ量産性を著しく悪化させるうえ、取り出す際に成形品表面が傷ついてしまうリスクがあります。

キャビとられが起こってしまう原因は、
・金型内面の面粗さが粗い
・抜き勾配が小さい
・アンダーカットがある
・溶融樹脂が固化し切っていない
ということが挙げられます。

金型内面の面粗さが粗い、または抜き勾配が小さいと、成形品とキャビティとの間に生じる抵抗が大きくなり、文字通りキャビティ側に取られてしまいます。この問題への対策は、ポリッシングする、キャビティ側の抜き勾配を大きくする、あるいはそれに加えてコア側の抜き勾配を小さくするという方法があります。

そして、アンダーカットがある場合は、PL面(パーティングライン)の変更やスライド機構の追加が有効な対策です。

また、溶融樹脂が固化し切っていないのは、PC(ポリカーボネート)やフッ素樹脂など粘度が高い樹脂を使用している、薄肉部や突起部など樹脂のまわりが遅くなりやすい形状をもっているなどの理由があります。これらに対しては、
・射出圧力や射出速度、冷却時間など成形条件を見直す
・粘度が低い樹脂材料への変更を検討する
・冷却管の本数や配置、流量など冷却システムを見直す
といった対策があります。

上記のほか、金型の摩耗・劣化や不純物、固化した樹脂が原因となることもあるため、金型の洗浄やメンテナンスは定期的に実施することをおすすめします。

「プラスチック金型 修理・メンテナンスナビ」は、プラスチック金型の修理・メンテナンスをはじめ、洗浄・クリーニング、図面・機構変更を伴う改造・修正、そして設計・製作までワンストップで対応しております。修理・メンテナンスのご依頼は、他社製・海外製のものも含めて年間360型以上お受けしており、ホットランナー金型や多数個取り・共取り型、入れ子点数が100~1,000にも及ぶ複雑形状の金型についても実績がございます。

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この記事の執筆者

  • この記事の執筆者
  • 野中啓志(設計課)

    私は兵庫の出身ですが、石川県で新婚生活を始めることになりグループ会社が石川にある、三恵金型工業への就職を決めました。設計に興味はありましたが、未経験。それでも採用し、ゼロから教えてくださった先輩方には感謝しています。設計は実際にやらなければ身につかないので、仕様書に基づく設計は入社直後からやっていました。現在は設計課に籍をおきながら、「多段式射出成形金型」の試作型製作にも関わっています。社運がかかった開発なので、自然と気合が入ります。